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Rev. Tsukasa Sugimura

むしろ騙されよ

更新日:2024年11月3日

 先月まで、「JME」という日本語放送で、朝ドラの「虎に翼」が人気だった。それに関連して、日本で4人目の女性弁護士の紹介があった。彼女の名は西岡光子(80)で、東北で初めての女性弁護士で、秋田で活躍した。戦前の日本では貧困から農家の若い女性が身売りされてゆく悲劇が絶えなかった。それを知った彼女は、弁護士になって、少しでもその問題を解消しようとして立ち上がった。その彼女のモットーが、「人を騙すより、騙されなさい」であった。

 もとより、その原点は聖書にある。「そもそも、互に訴え合うこと自体が、すでにあなたがたの敗北なのだ。なぜ、むしろ不義を受けないのか。なぜ、むしろだまされていないのか」(1コリント六・7)と。つまり、何かがあって訴えられた時でも、弁解は要らないと言うのである。こらえよと聖書は訴える。

 とは言え、弁解しないのは悔しいではないか。ジッとしていられないではないか。だからリベンジするのが世の常である。倍返しをしたくなるのである。この世では弁解して自分の立場を正当化したいと、誰しもが考える中にあって、むしろだまされなさいと言うのは、むしろ愚かだとも言えよう。だが考えても見よ、リベンジは「負の連鎖」を生むだけであり、苦しみ続けるだけである。

 ノーベル平和賞を受賞した、マルティン・ルーサー・キング牧師は言う。「どんなに私たちを迫害、差別をしても、私たちは耐え忍び、あなた方を愛する。それによっていつしか私たちは自由を勝ちとる。その過程で、あなた方の心と良心を勝ち取る。そうすれば私たちは二重の勝利となる」と。暴力や弁解では平和は決して来ない。愛によってでしか真の平和は来ないからである。

 このキング牧師の訴えは、「善をもって悪に勝て」(ローマ一二・21)と勧めるパウロの言葉からきている。それは善によって相手の心を捉えるためである。その人物も神の愛の対象だからであり、相手の良心を勝ち取るためである。

 主イエスは十字架上で、自分を殺す者のために、「父よ、彼らを赦したまえ」(ルカ二三・34)と叫んでいるが、それはひとえに敵の心をも捉えるためであった。主は「負の連鎖」を止め「愛の連鎖」をもたらすために、その先駆けとなったのである。その愛の連鎖にあなたもシッカリと組み込まれている。

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