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ジェットコースター

Rev. Tsukasa Sugimura

 一月二五日の朝、家内が乳ガンと分かってからの一連の検査の中で、MRIの結果が出た。ガンの転移の有無を調べる骨スキャンで左上腕部に何か病変らしきものが映ったので、CTスキャンに次いでMRIの検査も受けていたのだ。家内が、「ガンの転移だったらしい」と沈んだ声で僕に告げた。外科医からは、乳ガンは初めに脇のリンパ節に転移するのが普通で、いきなり上腕部の骨に転移することはまずないので、心配しないようにと言われていたのだが、そうではなかったようだ。居間でコーヒーを飲んで静まっていた僕は愕然としてしまった。ガンが骨にまで転移しているとなると、現在のステージ2からいきなりステージ4となって手術はできず、化学療法が主体となる。そうなると家内の精神的、肉体的負担は大きく、それに耐えられるかどうか実に心もとない。その時の僕は、十三年前に前妻が皮膚と骨のガンで亡くなった時のことを思い出していた。あの時のカオスの再来かと思うと、ただ二人で涙するしかなかった。

 それから半時間ほど経って、担当の外科医から家内に電話があった。「MRIの結果、左腕の病変は良性で、ガンではないので、予定通り二月早々手術をします!」と言う電話であった。隣室で聞いていた僕には、内容は分からなかったが、最初沈んでいた家内の声が、とつぜん嬉々としているではないか。電話の後で家内が叫んだ。「腕にあったのはガンではなくて、良性の血管腫なんだって!」。それを聞いて、今度は僕が耳を疑った。家内はMRIの報告を見て、ガンの転移だと思ったのだが、後でよく読んでみると、それは脇の下のリンパ節のことを言っていたのであって、内容を誤解していたのであった。半時間前まではステージ4だったのが、また急にステージ2に戻ったこともあり、まさにジェットコースターで下に落ちて、再び引き上げられたような体験であった。

 聖書のジェットコースターといえば、それは主イエスの十字架と復活であろう。ユダヤの指導者たちによって裁かれ、卑しめられ、ついには十字架につけられて殺されてゆく。イエスこそ救い主だと信じていた弟子たちは、それによって一挙に絶望の淵に落とされてしまった。だが、それから三日後に主は約束通り死から甦られたのである。果たして、これ以上の大転回があるだろうか。

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