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引退に寄せて ①

 僕は2025年いっぱいでアーヴァイン教会を引退する。20年間この教会で仕えさせていただいたが、サンファナンド教会(現在のクロスウェイ教会)での7年とオレンジ郡教会での27年と、その17年目に始まったアーヴァインの20年間の牧会を含めると、しめて44年となる。それは昨日始めた牧会のようでもあり、未だ信じられないのである。その歳月は走馬灯に映る影のように蘇ってくる。さて、赴任の第一歩は、予期しないトラブルから始まった。

 聖書学院卒業後、僕は1981年の夏、アメリカ本土への途次、ハワイでインタビューを受けた。僕とは初対面の牧師たちとの顔合せであった。その後、中野雄一郎師のリードのもと、一行に励まされて、夕方頃ロサンゼルス空港に着いた。だが、僕を迎えてくれるはずの牧師がいない。どこにもいない! もちろん、担当牧師にあらかじめ到着時間を報せておいたのだが、待てど暮らせど現れない。電話をするにも硬貨はないし、電話の掛け方もよく覚えていない。

 幸い、ウェスト・ロサンゼルス教会の日本語部の牧師が、教団での僕の任命を取り持ってくれたこともあり、彼の電話番号だけは持っていた。そこで、彼に電話するために、重い大きなスーツケースとカバンを引っ提げて、空港内を駆けずりまわり、公衆電話用の硬貨に両替できる場所を探した。そして、やっとのことで電話をしたのだが、時はすでに夕方で、案の定、担当牧師は電話に出ない。僕は途方に暮れた。だが、しばらくすると受話器の向こうから、「ハロー」と声がするではないか。なんと、たまたま教会に英語部のブライアン・ナカムラ学生牧師が立ち寄っていたのだった。彼は普段、その時間帯には教会にいない。しかも日本語牧師の部屋の電話だから、英語部の彼がこたえる必要もない。だが、彼は、夕刻の電話には何かがあるに違いないと思って受話器を取ったのだった。僕は喜びのあまり、すがり付く思いで彼に現状を訴えた。

「僕は今年、サンファナンド教会に任命を受けた牧師で、今ロサンゼルス空港にいますが、誰もピックアップしてくれないので、どうしたら良いのか困っています」と。すると、彼が「私が行きましょう」と言ってくれるではないか。そして「でも、どうやってあなたを見つけることができますか」と尋ねてきた。

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